6年前の金魚注意報との交信

最近、バブルがブームだ。1990年前後の経済の回顧本が話題を集め、バブルをネタにするお笑い芸人が大人気。バブル入社組は今や管理職世代で、会社でも幅をきかす。でも、そんなバブルおじさん・おばさんたちが若者から冷ややかな視線を浴びていること、知っていますか?

 東京都内のシンクタンクに勤める会社員男性(32)は、50代の男性上司からよくこう言われる。

「男は働いてなんぼ」「若いときの苦労は買ってでもしろ」

 上司は午後6時半の終業前に近づいてきては、「明日までに資料をつくってくれ」と事もなげに言う。男性は妻と共働き、2歳の子がいて、家事や育児を分担中。さすがに仕事は断れないが、内心うんざりだ。

「専業主婦に支えられた男ばかりではないことに気づいてほしい。現状を伝えても『昔は徹夜してでも仕事した』と逆に説教される。理解してもらえません」

 働き方、人づきあい、休日の過ごし方、お金の使い方……。1990年前後に入社して現在50歳前後のバブルおじさんと、20代〜30代前半の若手の意識は大きく違う。いつの時代も「今どきの若者は」と世代間の溝はある。ただ、最近は次元が違うようだ。

 バブル期は実質経済成長率が5%前後だったが、近年はほぼゼロ成長。女性の就業率(25〜34歳)はバブル期に5割台だったが、今は7割台。人口減少・高齢化社会を迎え、医療や介護の負担が重苦しい。ネットや携帯電話が普及し、経済も社会も激変した。

 ライフネット生命保険出口治明会長は、著書『働く君に伝えたい「お金」の教養』でこう記している。

<「昔はよかった」というおなじみのフレーズでみなさんを惑わせる困った人たちがいる。その困った人たちこそ、かつてのバブル期を20代から30代のときに経験したおじさん、おばさん世代。通称「バブルおじさん」です>

 記者(33)は「ゆとり」よりやや上の世代だが、バブルおじさん、おばさん(以下「バブ男(お)」「バブ女(じょ)」と略)への若者の苛立ちに共感する。その煩わしさは、“バブルハラスメント(バブハラ)”だ。

 東京都内の女性公務員(33)は昨年のボーナス支給時、50代のバブ女との会話がうっとうしかった。

「何に使うの。海外旅行、お洋服?」。女性が「貯金します」と言うと、「何それっ? 若いうちは使わなきゃ。給料は上がるから、何とかなるわ」。バブ女は同僚にも「聞いて、全部貯金だって」と同調を求め、「年上相手のうえ、一対多数で苦しかった」と女性。

 バブ男やバブ女と若者はすれ違う。なぜ海外旅行に行かないの、家や車を買わないの、お酒を飲まないの、残業しないの?……。

 都内のIT企業勤務の男性会社員(27)はバブ男の上司との飲み会で、「子供ができたら、車を買え」と勧められた。「いらないですよ」と答えると、「今どきの若者は夢がないな」と説教される。車は維持費もかかり、特に憧れない。電車の旅も悪くなく、必要ならレンタカーを借りればいい。正直にそう思うだけなのに。

 人材サービス会社で働く男性(30)はバブ男の上司に、身内だけで結婚式を挙げると報告した。すると、「職場の人は呼ばないのか」とけげんな表情。男性は「盛大な式でお披露目し、上司も招待されるイメージなのでしょう。でも、上司を呼ぶと堅苦しいし、節約もしたくて身内でやりました」。

 男性銀行員(27)は上司のバブ男と飲みに行っても、1次会で帰る。翌朝聞けば、バブ男たちは4次会まで重ねてタクシー帰り。その感覚が信じられない。

「おもしろい話が聞けるなら、つきあいますが、仕事の話や小言は聞きたくない。時間とお金の無駄ですね」

 男性は親しい友人や同期を呼び、よく家飲みをする。「気楽で、沈黙があっても気まずくない」という。

 住まいも価値観が違う。

 大学職員の男性(28)は、40代の上司からマイホームをよく勧められる。

「とりあえず、中古マンションを買ったらいい」

「お金がない。まだいいです」